笹部博司の演劇・舞台製作会社

白石加代子の阿部定

ドラマ「だが、情熱はある」で、オードリー若林正恭のおばあちゃん役としての出演が印象的だった白石加代子。

彼女のライフワーク「百物語」の世界を体験してみませんか。

公演は全て終了いたしました。ありがとうございました。

チラシ

白石加代子の阿部定

百物語の中でも最もユニークでひそかな人気作!
阿部定事件予審調書はその事件の当事者である阿部定が裁判所で語った調書である。
その調書を白石加代子が語る。
白石加代子が語るのは事件そのものであるが、同時にその時代の町と人々の光景でもある。
演出の鴨下信一は、その光景に「たまらない懐かしさ」を感じるという。
そして白石加代子の阿部定を再演したいと思ったのは、その光景にもう一度出会いたいと思ったからだ。
定とその愛人吉蔵は当時の浅草、銀座、新宿を彷徨する。昭和の初期の日本の光景。その光景をみなさんにも体験していただきたい。もしかして、それは私たちにとって大事な光景ではないだろうかと思うのだ。

白石加代子「百物語」の十七番目の作品に選ばれたのが、阿部定事件予審調書である。裁判所で事件の詳細を語った調書を、白石は椅子に座って淡々と読み続ける。白石はこのように語っている。
「『阿部定』って座ったまま、足をちょっとしどけなくして読むだけでしょ。好きだという人たくさんいるんだけど、自分ではなにをしているわけではないから、好きだといわれてもわからないの」
しかしその時の舞台は今も強烈に残っている。 観客は身じろぎもせず、見入っている。そして劇場中が段々に熱くなっていった。
演出の鴨下信一は、白石加代子に何もさせなかった。白石加代子は白石加代子であり続け、それがそっくり阿部定そのものになった。結果として考えると、「阿部定」の演出は、もっともさえわたった演出の一つではないだろうか。
劇評家の森秀男はこう語っている。
「特に興味をそそられたのは、阿部定が犯行を語ることで身体的快感を持続するという独特の語り口を、
白石加代子が鮮やかに生かしていたことだった」
阿部定は身体的な快感をもって、その愛の行為を語っている。愛人をひもで絞め殺し、その局部を切り落とし、それを持って逃げた。定はその行為に、まったく罪を感じていない。むしろ、誇らしげにどれほど愛人吉蔵が自分を愛していたかを語っている。
前々から、白石加代子の阿部定をもう一度やりたいと思っていた。実は「百物語」のスタッフも、この阿部定が好きで何かにつけ思いだすと語っている。

阿部定事件が起きたのは昭和十一年、二・二六事件が起きた年である。 日本が軍国主義に染まっていきつつある時代で、人々は平和を謳歌していた。
今、日本は外国人の人気スポットになっている。日本にはまだその頃の懐かしさが残っていて、日本を訪れる外国人はその匂いを嗅いでいるのかもしれない。
そしてその五年後には日本は真珠湾を攻撃し、全面的な戦争に突入する。

鴨下信一は、阿部定の予審調書の昭和初期の日本の情景が好きだと語っている。
「不思議なことにエロチックな部分はほとんど印象が薄かった。たいしたことはないのである。それよりもなんともいえない懐かしさがあった。阿部定の生きてきた世界はそんなに遠い世界ではなかった。同じ空気を呼吸してきた人に感じる共感のようなものの方がずっと大きかったのである。定が吉蔵といつづけした待合、尾久。二人して歩いた浅草や新宿、明治座や汁粉屋の梅園、銀座の資生堂やモナミ、どこもよく知った土地である。なによりも定や吉蔵、定の今ふうに言えばスポンサーである名古屋の大宮先生、下宿屋の家人や待合の女中、安芸者たちといった登場人物の皆が皆、面影が彷彿するなじみ深い人物、つまり阿部定はぼくにとってとても〈リアル〉な存在だった」

鴨下信一は「百物語」は時代を読むのだと常に語っていた。
そして白石加代子の阿部定は、昭和初期の日本を見事に蘇らせる。

阿部定は猟奇的な事件として知られている。しかし白石加代子の阿部定で、昭和の初期のぬくもり、性と言う形でひたむきに愛を求める男と女を感じて頂きたい。不思議な夢物語に迷い込む、そんな体験を舞台の上に作り上げることが出来ればと思っている。

プロデューサー
笹部博司

白石加代子 コメント

「劇評家の森秀男さんが熱っぽく語って下さったのを覚えています。阿部定が犯行を語ることで、わたしの中に身体的な快感があるっておっしゃるのね。阿部定は自分の犯行を喜々として話しているわけではないです。とても記憶が正確ですよね。場所とか時間とかのディティールがはっきりしています。そして感情的にならず、淡々と冷静に、客観的に話しています。でも、わたしの身体の中に犯行を語る阿部定の快感があると言うのは、いかにも森秀男さんらしい深い批評だなと思います。定は吉蔵との一部始終を語りたかったんだと思います。語ることであの事件を浄化したい、そういう気持ちがあったと思います。でもわたしはほんとにこの公演のことは何も覚えていないんです。終始椅子に座って、ちょっと足をしどけなくして読むだけなんです。一言でいえば演技的にはなにもするなってことだったと思います。だから自分では全然わからない。もう一度やれって言われても本当に困っちゃう。わたしの中には何も残っていないから。なにも演じてない。
だだ読んだだけ。でもわたしの周りの特に女性はこの話が好きですね。
あの風景が懐かしい、また出会いたいと言うのね。先生は、演技のことはなにもおっしゃらなかったけど、資料をたくさん貸して下さった。当時の花柳界とか、当時の浅草、銀座の写真とか、2・26事件とか、エログロナンセンスの時代なんですよね。数年後には日本は戦争に突入する。芝居の稽古よりもお話の方が多かった。先生は阿部定を通して、子供時代を過ごした風景を蘇らせたかったんじゃないかしら。昭和ですね。それも戦後の昭和ではなく、太平洋戦争前の昭和ですね。定はずっと水商売の世界を生きて来た。待合とか芸者とか・・・義理堅く人情深い・・・
再演というのはまったく考えなかったのですが、公演が決まって定との再会もちょっと楽しみになってきています」

白石加代子「百物語」とは

明治から現代の日本の作家の小説を中心に、「恐怖」というキーワードで選び、それを白石加代子が朗読するという形で出発したシリーズ。
上田秋成「雨月物語」、泉鏡花「高野聖」、坂口安吾「桜の森の満開の下」、江戸川乱歩「押絵と旅する男」、という幻想文学の傑作作品から、半村良「箪笥」、筒井康隆「五郎八航空」、阿刀田高「干魚と漏電」、高橋克彦「遠い記憶」、宮部みゆき「小袖の手」、小池真理子「ミミ」といった現代作家の人気作品までの幅広いレパートリーと、白石加代子の朗読という枠を超えた立体的な語りと動きの上演で人気を博している。
1992年6月、岩波ホールで始まり、2014年秋、泉鏡花「天守物語」をもって全99話を語り終えた。
「当初は肩の荷がおりて、すっきりしたと晴れやかな気持ちだったのですが、時を経て次第に〈まるで、愛を失ったかのような想い〉に急激に襲われたの」
との白石の想いを受けて、アンコール公演が始まった。これまでに第四弾を終え、現在も続行中。ライフワークとなっている。

ニューヨーク公演評

舞台は演者白石加代子だけ。ニューヨークの公演では、「人物の変化とともに、語りのイントネーションも、表情も、姿形までもが変化する、千変万化の白石加代子にとって視覚上の限界はない。迷信深い母親も、権威的な父親も、いともたやすく、よどみなく演じ分ける。年齢すら問題ではない。この五十代の女優は、赤ん坊でも死にかけた男でも、何の苦もなく生き生きと描き出すのだ」と評され、ワン・ウーマンショー、たった一人のエンターテイメントと絶賛された。

公演概要

タイトル
白石加代子の阿部定
「百物語 阿部定事件予審調書」
演出
鴨下信一
出演
白石加代子
公演

チケット好評につき、追加公演決定!
2023年11月14日(火)17時開演(開場は開演の30分前)

2023年11月15日(水)14時開演(開場は開演の30分前)

亀戸文化センターカメリアホール

東京都江東区亀戸2-19-1カメリアプラザ3F

JR総武線・東武亀戸線「亀戸」駅北口より徒歩2分

チケット料金
5,000円(全席指定・税込み)
未就学児のご入場はお控えください
チケット発売日
チケットぴあ最速先行
プレイガイド先行
一般販売
チケット取り扱い
チケットぴあ

(Pコード:520-870)

セブンイレブン店頭

ローソンチケット

(Lコード:33907)

ローソン/ミニストップ店内(Loppi)

イープラス
ファミリーマート店頭
チケットサンライズ

電話予約(オペレーター)0570-077020(平日10時~18時・土日祝休み)

※抽選販売・後日発券販売はWEB予約のみ

亀戸文化センター

03-5626-2121

(休館日毎月第2・4月曜)

※但し祝日の場合は開館・一般販売のみ受付

車いすをご利用のお客様は亀戸文化センター(03-5626-2121)にて9月10日(日)10:00~チケットをお買い求めください。

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0570-00-3337
平日
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北海道公演

道新ホール

舞台芸術共同企画011-596-7511

北海道公演

音更町文化センター

音更町文化センター0155-31-5215

メディア掲載

ステージナタリー 白石加代子が再び阿部定に「百物語 阿部定事件予審調書」