白石加代子「百物語」 アンコール公演第四弾
岩波ホール発
口の中に広がる何とも言えない美味な味、
「百物語」には笑いも涙も、苦味も洒落っ気も、
いろんな味わいがすべて揃っている
今回はそんなグルメな二皿
- 宮部みゆき
- 小袖の手
- 朱川湊人
- 栞の恋
- 構成・演出
- 鴨下信一
- 出演
- 白石加代子
-
宮部みゆき「小袖の手」
宮部みゆきさんは、舞台を見終わって、「この作品はわたしが書いたものなのに、その後一体どうなるのかとハラハラドキドキしながら、見てしまいました」とコメントなさっていた。
娘が古着を格安で買い求めてくる。母親はいきなり、その古着をバラバラにする。いぶかしがる娘に母親は、着物に取り付かれた男の話をする。一皿目は、宮部みゆきの恐怖とユーモアとが絶妙に味付けされた人情怪談をご賞味ください。 -
朱川湊人「栞の恋(かたみ歌より)」
「花まんま」で直木賞を受賞した朱川湊人の受賞第一作として、「かたみ歌」という七つの短編からなる作品集が発表された。「栞の恋」はその中の一本である。テレビで「世にも奇妙な物語」という形でドラマ化された。
一冊の本に挟まれた栞がとりもつ不思議で切ない恋物語。
お互いの顔も知らぬまま想いだけが募る淡く切ない恋の行方は…
この怪談は、一つの栞が昭和40年と19年前を行ったり来たりするところにあります。
白石加代子の現在から、純情な二十歳の乙女へと思い出の時間に入って行き、不思議な恋の時間を生きる。笑って、泣けて、特上の美味な話である。
まるで、愛を失ったかのような想いに急激に襲われたの
1992年6月岩波ホール発で始まり、2014年秋、泉鏡花「天守物語」をもって「百物語」、全99話を語り終えた白石加代子はこのように語った。
当初は「肩の荷がおりて、すっきりした」と晴れやかな表情だったのですが、時を経て次第に、<まるで、愛を失ったかのよう (本人談)>な想いに急激に襲われたと話してくれました。
あまりにも自分にとって大きな存在だった「百物語」。ファイナルを終えて、忙しい仕事の合間を見つけ、アンコール公演・第一弾として、筒井康隆「五郎八航空」、南條範夫「燈台鬼」、第二弾として、三遊亭円朝「怪談牡丹灯籠」、第三弾として、夢枕獏「ちょうちんが割れた話」筒井康隆「如菩薩団」半村良「箪笥」和田誠「おさる日記」、そして今回のグルメな二皿は第四弾となる。
舞台は演者白石加代子だけ、ニューヨークの公演では、「人物の変化とともに、語りのイントネーションも、表情も、姿形までもが変化する。千変万化の白石加代子にとって視覚上の限界はない。迷信深い母親も、権威的な父親も、いともたやすく、よどみなく演じ分ける。年齢すら問題ではない。この五十代の女優は、赤ん坊でも死にかけた男でも、何の苦もなく生き生きと描き出すのだ」と評され、ワン・ウーマンショー、たった一人のエンターテイメントと絶賛されました。
「百物語」について
白石加代子「百物語」シリーズは、明治から現代の日本の作家の小説を中心に、「恐怖」というキーワードで選び、それを白石加代子が朗読するという形で出発した。
上田秋成「雨月物語」、泉鏡花「高野聖」、坂口安吾「桜の森の満開の下」、江戸川乱歩「押絵と旅する男」、という幻想文学の傑作作品から、半村良「箪笥」、筒井康隆「五郎八航空」、阿刀田高「干魚と漏電」、高橋克彦「遠い記憶」、宮部みゆき「小袖の手」、小池真理子「ミミ」といった現代作家の人気作品までの幅広いレパートリーと白石加代子の朗読という枠を超えた立体的な語りと動きの上演で人気を博している。
キャスト・スタッフ
- 原作
-
- 宮部みゆき「小袖の手」
- 朱川湊人「栞の恋(かたみ歌より)」
- 構成・演出
- 鴨下信一
- 出演
- 白石加代子
- プロデューサー
- 笹部博司
- 企画・製作
- メジャーリーグ
白石加代子よりコメント
99話を語り終え、ホッとして肩の荷を下ろして数年、ある日、ふと本箱の百物語の台本に目を止めました。引き込まれるように読みはじめると、いろんなことが思いだされて、とても懐かしく、また出会いたいと思いました。そうして始めたアンコール公演、今回はその第四弾です。
「あと何本語れるのだろうか」100歳までというのは、いくらなんでも無理ですよね。それこそ怪談です。でも皆様の応援と支えがあれば、まだもう少しは語り続けられると思います。どうぞよろしくお願いいたします。